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『思い出』
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自分は狂っていると思うかと、貴方に尋ねられたとき。
貴方は私に相談したのではなかった。
まるで。私の返事に、そのことを全て委ねているように見えた。
狂っていない、と言って欲しいという希望も無く、
狂っていると言われる事を予測した不安や恐れも無く、
ただ、それがどちらでも。
この人が言うことを、そのまま受け入れようというたたずまいだった。
自分自身が狂っているかどうかを、本気で他者に問わなければならない心境とは?
それはいったい、どれほどの事態かと、言葉にならない感情がよぎった。
「狂ってない」
断言した。
「狂っているかどうかは、目を見れば分かる。貴方の目は、狂ってない」
貴方の目を見て、真剣に伝えた。
「貴方は、少しもおかしくない」
3度目の言葉を言った。
あの時の言葉は。わざとじゃなかった。
貴方を励ましたり、慰る気持ちで言ったのでもない。
それに。
委ねられた事に責任を感じて、
その恐れを補うために「狂っていない」と伝えたのでもない。
貴方は、本当に狂っていなかった。
会話は、それだけだった。
あの時貴方は、自分が狂っていない事を知った(受け入れた)。
人間には、人と同じでない事の方が、ホントは多いと思うし、
長い間人に合わせすぎて、すっかり疲れた事が極限に達し、
誰一人、味方がいないように感じることも自然にあると思う。
ストレスが極限に達すると、その人は
大抵の場合「考えすぎだよ」「ちょっと過敏なんじゃない?」「普通じゃない。。」
という言葉をかけられやすくなる。
それが続くと、完全に理解者を失う(そんな気が、本気でする)。
理解者を失う(そんな気が、本気でする)と、本物の孤独が心を満たす。
どんなふうにそれを乗り越えようか、何とかしてここから抜け出ようと、
自分なりに方法を探し懸命に生きる姿や、
世間に合わせる事で、内面に生じたGAPを埋める為に無意識にとってしまう行動が、
人から奇異な目で見られる事に繋がりやすいだけだ。
でも。大抵の場合、貴方はおかしいのではない。
ただ周囲に、貴方の悩み・苦しみの深さを理解できる人がいないだけだと思う。
だってもし、その貴方の前に同じように深い悩み・苦しみを持った人がいたとしたら、
貴方はその人に「考えすぎだよ」って言わないと思うから。
苦しみに対して無意味な教え諭しや、苦痛をもっと深める叱咤激励も、しないと思う。
考えるのには、考える理由がある。
例え貴方以外のほとんどの人が、その悩みを軽く扱っても、
それは貴方以外の人の話だ。
貴方には、それだけ考える理由があるから、考えてしまうのだと思う。
貴方にとってはそれほど、重要な問題なのだと。そう思う。
病院をたらい回しにされ、貴方を救う筈の施設を逃げだし、
夜通し裸足で歩き続けた事もあったと教えられた。
鉄格子のある部屋の中で、初めて家族の前で涙を流したと聞いた。
あの時、貴方には家族も敵か悪魔に見えただろう。
よくぞ、これまで耐え抜き、頑張った。
私が同じ立場なら、貴方のように耐え抜く力はなかったと、本気で感じる。
貴方は今、自分で選んだ道を「優秀さ」とかで比較され、
「人の思う普通」とかで評価をされる価値観が主流の世界で、
人から与えられる否定的な意識も知りながら、自分のペースと自分の意志で歩んでいる。
どうかもう、貴方にこれまで以上の苦しみを近づけて下さるなと、愛に願う。
貴方が、ある日
「こんな自分でも、(生きていれば)幸せになれるかもしれない」と穏やかに言った時。
私は。(涙よ、でるな!)って、心で念じて、泣くのを堪えた。
そして。
「うん」って答えた。
その事があって、しばらく経った頃。
1日、貴方と過ごす機会が出来たとき。
私は心の中で、その日の決まり事を作った。
今日は、貴方のバイブレーションに添い続ける1日にしようと。
貴方はその1日、特別に笑うこともなく、
食事をしていても、ケイタイを出してずっとケイタイで遊んでたり。。。。
私には、はたして貴方が楽しいのか嬉しいのか、
またはその反対なのかさえ見当がつかなかった。
貴方が笑わなくても、ケイタイばかりいじっていても、
ただひたすら、そのままにするよう努めた。
貴方のバイブレーションに反する影響を与えないように、
私はその事だけを大切にした。
そうして。
その日は終了した。
その日が貴方にとってどうだったのか、私には分からなかった。
でも、貴方と過ごす為に自分で決めた決まり事は、最後まで守り通した。
後日。
ひと伝手に。
貴方があの日の夜、口にした言葉を聞いた時。
体中で、すっかり安心した。
その後、嬉しかった。
「今まで生きてきて、楽しいと思った事はなかったけど、今日はすごく楽しかった」って。
【20071108/20:50】
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