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『むかし。むかし』 |
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むかし。むかし。
あるところに、優しいおじいさんと頼もしいおばあさんが暮らしていました。
ある日、おじいさんは川へ夕食の魚釣りに、おばあさんは山仕事に出かけました。
おじいさんが川で魚釣りをしていると、
川上の方からジャンジャンチャプチャプ、ジャンジャンチャプチャプと、
黒髪の子どもが流れて来ました。
おじいさんは心配して黒髪の子どもの様子を観察しました。
すると。
黒髪の子どもはおじいさんの前を流れる時、
「大丈夫!一人で岸に上がれるよ〜」と、
ようやく言いながら流されて行きました。
おじいさんから見ると、黒髪の子どもは大丈夫ではなさそうでした。
黒髪の子どもは溺れているように見えたので、
おじいさんはすぐさま山のおばあさんに「意志電波」を送りました。
山仕事をしていたおばあさんは、
おじいさんからの「意志電波」をキャッチして、「第3の目」で状況を把握しました。
すぐに山の“木”の同意を得て、手頃な木を大地から一本引き抜くと、そのまま川まで瞬間移動しました。
ここまでの動作、2秒。
おばあさんは引き抜いて来た木を、黒髪の子どもの前方にドカンと置きました。
そこへ流れて来た黒髪の子どもは、木に引っかかり、おじいさんとおばあさんに助け出されました。
可哀想に、黒髪の子どもは切羽詰まった様子でした。
おじいさんは黒髪の子どもに、
「まだ小さいのだから、出来るだけ人に助けを求めるのだよ」と伝えました。
黒髪の子どもは歯を食いしばり、涙ぐみながら「そうだな..」と答えました。
聞いてみると、黒髪の子どもは親兄弟を亡くし一人ぼっちになったので、
自分を鍛える為、何でもひとりで出来るように毎日訓練をしていたと言うのです。
黒髪の子どもの近くには、他には誰も暮らしていませんでした。
その日。黒髪の子どもは、川で魚を捕っている時に足がすべって流されたのでした。
そこで。
おじいさんとおばあさんは、黒髪の子どもと一緒に暮らすことにしました。
黒髪の子どもは大体おおざっぱでしたので、
呼び方は「じいさん」「ばあさん」と呼んだらいいだろうかと質問しました。
すると、おじいさんとおばあさんは話し合って、
言葉使いも大切なので「お」をつけて呼んだ方がいいだろうと答えました。
黒髪の子どもは「じいさんとばあさんがそう言うなら、それがいいだろう」と思い、
この後すぐに「おじいさん」「おばあさん」と思い直しました。
この日から、黒髪の子どもはおじいさんの優しさとおばあさんの頼もしさを自然に学びました。
だって。
それがその人の本物の素質なら。
近くにいる人は、
一緒に過ごしているうちに知らずにその素質を身に付けるものなのです。
黒髪の子どもは、おじいさんとおばあさんから気に入った素質をそれぞれに学んだ為、
とてもバランスの良い状態に育ちました。
でも、黒髪の子どもは、それを少し不安に思う時がありました。
何故なら。黒髪の子どもは、
これまでおじいさんは、おばあさんの頼もしさに守られ、その優しさがより一層育まれ絆も深まり、
おばあさんは、おじいさんの優しさに支えられ、その頼もしさがより一層育まれ絆が深まるのを、
ずっと傍で見てきたからです。
黒髪の子どもは、そんなおじいさんとおばあさんの絆に憧れていました。
そして黒髪の子どもは、ひとりでバランス良く育ってしまうと、
おじいさんおばあさんのように、
お互いを育み合えるようなパートナーには出会えないのではないかと不安になりました。
そこで、黒髪の子どもは、ある日思いきって、その気持ちを二人に伝えてみました。
すると、おばあさんは楽しそうに笑い、おじいさんは優しく微笑みました。
そして。
心配はいらないと言いました。
理由は、バランス良く育ったものは、やはりバランス良く育ったものと出会い、
そこからまた、おじいさんもおばあさんも知らない様な、新しいものを作り出せるからだそうです。
黒髪の子どもは、とたんに嬉しくなり、あんまり嬉しくて気持ちが盛り上がったので、
「今日からもっと働くぞ〜!」と言って、その日から、いつもの倍の仕事をするほど頑張りました。
ですがその行為は3日続いただけでした。
黒髪の子どもはその様子に「3日子ども」と名付けました。
「3日坊主」という言葉もあるそうですが、黒髪の子どもは少し丁寧な気分で名付けたので
「3日子ども」になりました。黒髪の子どもが自分で考えました。
「3日子ども」なら、それはそれで良かったと思います。
だって。
元々、いつもの調子で仕事をすれば、それで十分だったのですから。
さて。
それからまた月日が経った頃、おじいさんとおばあさんは
同じ日の同じ時刻に、手をつないで息を引き取りました。
これを、「寿命」と呼ぶのだそうです。
おじいさんとおばあさんは、生きている間の役割を終えたので、宙へ還りました。
じゃぁ、黒髪の子どもはまた一人になったのかって?
心配?(笑)
大丈夫。
今ではもう「黒髪の“元”子ども」になった黒髪の大人は、
おじいさんとおばあさんの生きているうちから、一人でバランスのとれたパートナーに出会い、
もう既に、誰も知らない様な「新しい何か」を創り始めていたのです。
それが、繋がる全てのものへの「恵み」になる事は、当たり前に決まりきったことです。
その後のお話も皆さんの気になる所かもしれませんが。。。
おじいさんとおばあさんは宙へ還ったとしても、黒髪の“元”子どもは、まだこの世に暮らしておりますので、
今のような時代ですから、個人情報保護の為、お話はここまで。
えッ!?
「むかし。むかし」の話なら、黒髪の“元”子どもも、この世にはもういない筈だって?
それがね、私の使う「むかし」という言葉には秘密があるのです。
それはね。
私は、昨日より前の事を「むかし」と呼ぶことにしているからです。
そんなわけで、この話。
わりと新しいの。
釣りとか山仕事は、今の時代でも普通にあるでしょ?
「川に洗濯」とか「山に芝刈り」とかなら、かなり古い感じするケド。
あ。そうそう、黒髪の子どもを助けるために、おばあさんが川にドカンと置いた木ね、
あの木はその後、そのまま川の橋になって、人々の暮らしを助け続けました。
木も、それに満足したんだって。
【20071217/01:04】

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